バドミントンでGO！ 関東大会真っ只中の、ある日の放課後。 菊丸・桃城・の３人は、街のテニスキッズ達が日夜熱戦を繰り広げる ストリートテニス場…の近くの公園でバドミントンを楽しんでいた。 （部活はどうしたんだ、というツッコミは無しの方向で。 　だってボーリングにも行ってますしね…） 「菊…丸…ビ ―― ム！！」 ―― ポスッ。 「ジャックナイフ！！」 ―― ポスッ。 息抜きのつもりで来たのだが、 菊丸も桃城も必殺技を連発するためラリーが続かない。 ついに堪忍袋の緒が切れたは… 「もーっ２人とも、これテニスじゃないんだからね！？ 　私にも打たせてよぉ！」 「悪ィ、すっかり忘れてたぜ。」 「メンゴメンゴ。怒んないで、ちゃん？」 「もう…」 スネてしまったを、懸命になだめる男２人だったが… 「随分と楽しそーだな、菊丸に桃城よ。」 どこからか突然降ってくるセクシーボイス。 公園内を見回すと、白とブルーグレーのジャージを着た集団が いつの間にかジャングルジムの上に陣どっていた。 関東大会一回戦で青学に敗れた、氷帝学園の面々だ。 最上段中央に足を組んで座る跡部を筆頭に、その後ろには直立不動の樺地、 さらに忍足と向日が脇を固め、前方には何故か滝もいる。 なんとも絶妙な配置だ。（でもジャングルジム） 「大会中だってのにこんなところで遊んでやがって、 　余裕だなぁ青学さんは。」 跡部はジャングルジムのてっぺんから３人を見下ろして、 フンッと鼻で笑った。 大会で敗退しても、彼の俺様っぷりは健在らしい。 他のメンバーもそれぞれに、２人分の荷物を背負ってたり、 ばりばりの関西弁だったり、カエル座りでヒョイヒョイやってたり、 「やるねー」などと口走ってたりと、相変わらずのようだ。 やがて跡部は、きょとんとした顔で自分を見上げている に目をつけた。 「ん？　そこのお前、初めて見る顔だな。名前教えな。」 「えっ、あの…　、ですけど…」 「なかなかカワイーじゃねぇの、なぁ樺地？」 「ウス」 「気に入ったぜ。デートしてやるから来いよ。」 「は…？」 困惑気味のに、跡部はさらにアプローチをかける。 「どうしたちゃんよ。この俺がデートしてやるって言ってんだぜ？ 　俺様の誘いに酔いな。」 「…………………………」 は、完全に引いてしまっている。 「させない！！」 そこに割って入ったのは菊丸。 真剣な表情で（バドミントンの）ラケットをシュルンシュルン…と回し始めた。 「（こいつ…今までと目つきが変わった！）」 思わず息を飲む向日。 「ちゃんはぜぇーったい誰にも渡さないッ！ 　なぁ桃？」（すでに彼氏の心境） 「そうっすね…跡部さんには悪いが、を危ない目に 　遭わせるわけにはいかねーな、いかねーよ…」（すでに兄貴の心境） 「「コレで勝負だ！！」」 ２人は、ラケットを前に突き出して言い放った。 「フッ…バドミントンか。 　まぁいい、そのかわりこっちが勝ったらちゃんは渡してもらうぜ。 　行け樺…」 「待てよ跡部！！」 樺地が返事をするより先に、向日が跡部の言葉を遮った。 「俺らが行く。コイツらにこないだの借り、返さなきゃな。いいだろ侑士？」 「せやな…」 ジャングルジムから飛び降りる向日と忍足（ただし約１名宙返り）。 「じゃあダブルスってことでいいっすね？」 「当たり前。俺達ダブルス専門！」 ＊　　　　　＊　　　　　＊ こうして、を賭けた関東大会ダブルス２の リターンマッチが始まった。（でもバドミントン） 手持ちぶさたになってしまったは、つっ立って見ていることもないと思い、 ジャングルジムの下のほうに腰かけた。 とは言っても、樺地は先程からずっとてっぺんにつっ立ったままでいるのだが。 「絶対負けないんだかんね！」 「なんや菊丸、ムキになりよって。あの子のこと好きなんか？」 「う…」 「照れてないで、言ってみそ。ついでにもっと跳んでみそ。」 「別にええやんか、お前らには関係ないみそーッッ！！」 「英二先輩、うつってるっス…」 ドロップショットを放ったりヒグマを落としたりと、 バドミントンにおいてもゲームを知っている忍足。 実は昨日の晩から“バドミントンを制する３６ヶ条”を 腕に書いて覚えていた桃城。 賭けの内容が内容なだけに、自分が先輩だということも忘れて 前で好き勝手にプレイする菊丸。 それに対抗すべくシャトルよりも高く跳んでいる向日。 「ちゃんだって跡部とデートなんてしたくないハズ… 　俺達は２人じゃない、３人でダブルスをやってるんだ！」 「い、いきなり何言い出すんスか英二先輩…！？」 白熱のバドミントン対決は延々と続く… …………… 「フン…調子づきやがって菊丸に桃城め。 　だが勝つのは氷帝、最後にちゃんをもらうのはこの俺だぜ！」 「やるねー」 ジャングルジムの上から楽しそうに試合を眺める跡部と滝。 一方で、完全にほったらかしにされたは、 ぷくっと頬をふくらませてジャングルジムに座り込んでいた。 「せっかくバドミントンしに来たのに、 　男の子達ばっかり盛り上がっちゃってつまんないよー…」 ふと上のほうを見ると、忍足・向日ペアに出番を奪われた樺地が、 最初の位置から一歩も動かずボーッと立っていた。 は、その高さまでよじ登っていく。 「あの…樺地君、だよね…？」 「ウス…」 「ねー、ヒマだし、おなかすいてきちゃったし… 　なんか食べに行かない？」 「い゛ぃ ―――― っ！？」 「ダメかなぁ？　樺地君だって見てるだけじゃつまんないでしょ？ 　だから行こ行こっ！」 「ウウウウウス…ッ！」 ＊　　　　　＊　　　　　＊ そして試合終了後… 「うわあああん！　ちゃんがいなくなっちゃったよー！！」 「なんやうちら、試合した意味あらへんやん。」 「無駄に跳んじまったぜ、くそくそ青学め。」 「そういや樺地もいないっすね…」 みんながと樺地を必死で探している間、当の２人は 近くのコーヒーショップで仲良く午後のひとときを過ごしていたのでした。 「戻ってこい樺地ィィィィィ！！」 「やるねー」 Back