第５話 飛べ、魂を重ねて 朝日が差し込み、その眩しさに目を開く。 見慣れない天井。 ソファに横たわり、毛布を掛けられていることに気付く。 ここはどこ？ 眠る前、自分は何をしていた？ この数日であまりに多くのことが起こり、 整理できずにいたのかもしれない。 数回まばたきを繰り返した後、混乱する頭を抱えながら起き上がる。 「おはよう。」 「え…リヴァイ…兵長…！？」 声をかけられ、驚いて目を丸くする。 リヴァイが正面のソファに腰掛け、 頬杖をついて呆れたようにこちらを見つめていた。 同時に、昨晩の出来事を思い出す。 「あ…あ…、も、申し訳ございませんッッ！！ 上官の執務室で眠りこけるなど、何たる不覚… それに…あの…昨日は…ッ、その…、…ッ、 ああもう、死んでお詫びをッ…！」 「オイオイオイオイ、昨日あんな話をした後だろう、 すぐ死ぬとか言うな。 今茶を淹れてやるから…それで少し落ち着け…」 取り乱すを座らせ、慣れた手つきで準備をする。 やがてリヴァイが持ってきたティーカップからは、 澄んだ黄金色のハーブティーが林檎の果実にも似た 甘い香りを立てていた。 「昨日のと、味が違う…？」 「昨日のはアールグレイだ…体が温まるようレモンを入れてやった。 それはカモミールといって、俺は気持ちを鎮めたい時に飲んでいる。」 半分ほど飲むと、はふぅと小さく息をついた。 「…で、よく眠れたか？ 戻ってきてからろくに休んでなかっただろう？」 「はい…なんだか、スッキリしました。」 「そいつは何よりだ。俺は、誰かさんのせいで寝不足だがな。」 「申し訳…ありません…」 カップを置き、はリヴァイのほうに向き直る。 「私、誤解していました…兵長って、思ったよりお優しいんですね。」 「バカ言え、俺は元々結構優しい。」 「ふふっ…」 「何ニヤニヤしてやがる、気持ち悪ぃな。」 顔をしかめるリヴァイをよそに、ははにかんだ表情で続ける。 「いえ…今ならペトラ達の気持ちがちょっと分かるな、と思いまして。 二人とも、本当に兵長のことを慕っていましたから…」 「で、お前にはそれが理解できなかったと？」 「ごめんなさい…」 「それでどうなんだ、まだ俺のことが憎いか…？」 「そんなことは、ありません…」 「…まあそうだろうなあ、あんだけピーピー泣きじゃくった挙句、 ベタベタひっついて甘えてきやがって…」 「！ ……だ、だってそれは…… 兵長が…私が泣くようなことを言うから……」 調子に乗るなよと言わんばかりに畳みかけると、 は拗ねたように口を尖らせて目をそらした。 その表情がかつての妹分、イザベルを彷彿とさせ、 思わずその髪をくしゃくしゃと撫でた。 その意外とも言える行動に、は 心臓が跳ね上がるような感覚を覚え頬を赤くする。 「兵長…？」 「あいつらの話をしたくなったら、いつでも来い。 ここでなら、いくらでも泣いていい…」 「はい…ありがとうございます…」 「ただし、俺のシャツを汚していいのは今回だけだ。 鼻水まで垂らしやがって、汚ねえったらありゃしねえ。 次からは、綺麗に洗濯させるからな。」 「はい…」 は、心底恥ずかしそうに肩をすぼめてうつむいた。 くるくると変わる表情が、不覚にも可愛らしいと思ってしまう。 それを悟られないように、リヴァイは身支度をしながら話題を変えた。 「さて…お前が檻の中で鼻歌を歌っている間に、色々と状況が動いた。 女型の正体がほぼ特定され、その捕獲作戦が秘密裏に計画されている。 決行は今日、これからだ。」 「なッ…！？ そいつの名は…？」 「ストヘス区憲兵団支部所属の新兵… 104期訓練兵団のアニ・レオンハートだ。」 「アニ・レオンハート…」 の瞳が、再び怒りの色を帯びる。 「兵長、私に…私にやらせてください。 あいつは…あいつだけは許さない、絶対にこの手で…！」 「落ち着け。目的は殺すことではなく捕獲することだ。」 リヴァイはの両肩を掴み、その目を見つめる。 「…それに、奴を殺したいと思っているのはお前だけじゃねえ。」 「…すみません、先走りました…」 「悪くはねえが、その熱さが命取りになることもある…気を付けろよ。」 「はい…」 目を伏せるの肩を軽くぽんぽんと叩くと、 リヴァイは再び身支度を始めた。 「今回の調査の失敗によってエレンの憲兵団への引き渡しが決まり、 俺ら主要幹部は王都に召集というクソな状況になったわけだが… 今日、その護送中にストヘス区内でエレンが抜け出して 目標を地下通路に誘導、巨人化させることなく捕獲する。 お前ら第三分隊はストヘス区内で待機だ。 状況に応じてエルヴィンに合流し、行動を共にしろ。」 「……」 「お前の苦手とする集団行動だが…行けるか？」 「はい…！」 強い眼差しで返答するを一瞥して小さく頷き、 上着を羽織りながら背を向ける。 「あの…兵長！」 「なんだ？」 先に部屋を出ていこうとするリヴァイを、思わず呼び止めた。 「もっと…たくさん…兵長と話がしたいです。 ですから…その…どうかご無事で…！」 「はっ、俺はこの怪我だ、戦闘はできねえよ。 むしろ危険なのは、いつどこに駆り出されるか分からねえ お前のほうだ。」 「……」 「…生きて帰ってこられたらここに来い。 その時は、また別の茶を淹れてやる…」 「はい…ではこの次は、紅茶に合うお菓子を持ってきますね。」 「好きにしろ…」 リヴァイは軽く鼻で笑い、部屋を後にした。 ＊ ＊ ＊ ウォール・ローゼ南方の草原を馬で駆けるのは、 ジャケットの紋章に自由の翼とユニコーンが混在する一団。 の属する第三分隊は、即席で集められた憲兵団の兵士達とともに エルヴィン率いる本隊の後方に配置されていた。 女型の巨人の捕獲には成功するも、その中から現れた アニ・レオンハートは、拘束される寸前で巨人特有の硬質化能力により 自らを水晶体の中に閉じ込め、一切の干渉を絶ってしまう。 ストヘス区内の憲兵団支部にて調査兵団の独断による 作戦実行の是非が問われる中、ウォール・ローゼ内地に 巨人が出現したとの一報がエルヴィンの元に届く。 内地での戦闘と夜を徹した索敵を経て104期生を含む 一部の調査兵団の兵士達がウォール・ローゼに到達するものの、 巨人が侵入できるような穴は見つからなかった。 壁上での待機中、突如104期生のライナー・ブラウンの口から、 自身が“鎧の巨人”、そしてベルトルト・フーバーが “超大型巨人”であることが告白される。 仲間の裏切りに激昂して巨人化したエレンは、調査兵団とともに 応戦するが敗北し、同じく巨人化能力者であることが判明した ユミルと共に連れ去られてしまった。 そしてエルヴィンが動き出す。 ストヘス区内で待機していた兵士達のほか、 内地から集めた憲兵団を率いてウォール・ローゼの兵士達と合流、 ハンジが彼らの逃亡先と推察した巨大樹の森へと エレンの奪還に向かっていた。 「…んだからよォ、なァんで俺ら憲兵がこんな危なっかしい 壁外に駆り出されなきゃならねェんだって話だよ。 人手不足だかなんだか知らねェが、 俺らには俺らの大事な内部の仕事があるんだっつーの。 なァ分かるかお嬢ちゃんよォ…」 中年の憲兵が、レーナを相手にネチネチと不満をぶつけていた。 出陣直前まで酒をあおっていたようで、顔は赤く呂律も回っていない。 「（イラつく…壁外ナメてんのか？）」 「（舌噛め…）」 「（落馬しろ…）」 その様子に第三分隊の兵士達が苛立つ中、 二騎の間にが割って入った。 「ご不満があるのは分かりますが… うちの団員を、あまり苛めないでいただけますか？」 「あァ？ 憲兵様に逆らうのか班長さんよォー？」 絡んでくる憲兵にも臆することなくは続ける。 「…あなた達は考えたことがありますか？ 壁周辺の住民が日々どのような気持ちで生活しているか、 前線の兵士がどれだけギリギリの状況で戦っているか… 立派な仕事をしているつもりになって、 安全なところで椅子を温めているだけのあなた達には 分からないでしょうけれど… 元はといえば私達は同じ兵士。 同じ税金で食べさせてもらっている者同士、 有事の際には助け合うのがスジではないですか…？」 「はァ！？ 言わせておけばこのガキが…！」 「いたぞ！」 アーベルの声に、一気に緊張が高まる。 周囲の景色は、巨大樹の森へと変わっていた。 前衛部隊の向かう先に逃走する鎧の巨人の姿を捉えるが、 森の中に潜んでいた巨人達により一団はかく乱されてしまう。 エルヴィンは鎧の巨人の逃亡を阻止するため 敢えて巨人の群れを引き連れて前進を続けるよう指示を出すものの、 見通しの悪い森の中で巨人達に進路を阻まれ、 後方を固めていた第三分隊は本隊から完全に分断されてしまった。 「オイ、どうすんだよ調査兵団？ 獲物を見失っちまったぞ！？」 「アーベル分隊長…戦いましょう、このままでは囲まれて全滅です。」 うろたえる憲兵を尻目に、がアーベルに声をかける。 「生き残るためには致し方なし、だな… …第三分隊、戦闘用意！ 進行方向の小さな奴らを中心に叩き、数を減らせ。 目的はあくまで本隊への合流だ、敵の状況を見つつ俺が先導する。 ……今だ、立体機動に移れ！！」 「「ハッ！！」」 アーベルの合図を受け、兵士達は一斉に飛び上がった。 立体機動に適した場所でもあることから戦闘は有利に進み、 巨人の数は少しずつ減っていった。 「よし、進路確保…ここから一気に進め！」 森を抜ける道を見出したアーベルが、 兵士達に向けて前進を命じた矢先のことだった。 「みんな待ってッ…！」 「オイ大丈夫か、急げレーナ！ …ッ！？」 不慣れな戦闘で遅れをとったレーナの声に反応した その一瞬の隙をつかれて巨人に捕えられ、骨の砕ける音が響く。 「ぐああ…ッ…！！」 「分隊長ッ！！」 は巨大樹の幹を蹴って空中で方向転換し、 巨人のうなじを削いで間一髪のところで捕食を阻止した。 「みんな、分隊長をお願い！」 後輩の兵士達がアーベルを保護したことを見届けると、 すぐさま立体機動装置を発動し、巨人達に飛びかかる。 「こっちだ、急げ！」 目の前の敵を倒しつつ木々の間を縫って森を抜けると、 巨人の群れを連れた本隊が遥か斜め前方に見えた。 「チッ、方向を誤ったか…」 は馬を呼び寄せた後、“問題発生・一時離脱”を示す 煙弾を打ち上げた。 ともに森を抜けた第三分隊の兵士は、出発時の八割程にまで減っていた。 全体ではそれ以上に多くの兵士の損失が予測されることから、 一刻も早く本隊に追い付き加勢したい。 だがこの時すでに、森の中からついてきたものも含めて 大小十体強の巨人に取り囲まれつつあった。 「本隊はあんな先に…もう駄目だ…」 「分隊長…俺達どうしたら…」 アーベルは重傷を負い、戦闘ができる状態ではない。 周囲を見渡すも、熟練兵士の姿はない。 「死にたくねえよ…早くあいつらを倒してくれ！」 「うるせえぞ憲兵団！」 「ちくしょう、どうすりゃいいんだよ！？」 「誰か、指示を…！」 指示系統を失った第三分隊は、烏合の衆と化していた。 その間にも、次々と巨人に襲われていく仲間達…。 混沌の中、は天を仰ぎ、祈るように目を閉じる。 「（…オルオ、ペトラ…私に力を…見ててね！）」 はキッと目を見開くと、凛とした声を響かせた。 「総員静まれ！ これより第三分隊は私が指揮を執る！ 負傷者は重傷者を保護し荷駄２班とともに即時撤退、 命を無駄にするな！ 戦う気のない憲兵団も同じだ、足手まといになる前に去れ！ 動ける者は私について来い！！」 戦える者のみが馬で一斉に移動することで、巨人達の注意を引きつける。 振り返り状況を確認する。 大半の誘導に成功したようで、追ってきているのは十体。 このうち、馬の走力を上回ると見られる個体が三〜四体。 長距離を逃げ切るのではなく、敵を倒して進むことを選んだ。 分隊を率いて大きく旋回し、巨人達と向かい合う。 「合図とともに戦闘開始だ。 １班は私とともに中央四体。 ２班は右二体、ケビンが指揮だ。」 「ＯＫ！」 「３・４班は左四体、それぞれサニーとルフィンに任せる。」 「「はいっ！」」 「５班は戦闘には参加せず、荷駄１班を挟み本隊に向かって 等間隔で縦に展開、断続的にその方向を煙弾で示せ。 合流までの間、緑の煙弾の使用を私の責任で許可する。 先導は…レーナ、できるか？」 「え…っ…！？」 名を呼ばれたレーナは、ビクリと肩を震わせた。 言葉を発することができず、青ざめた顔で涙を浮かべている。 「聞こえないのか、レーナ・ミレッカー！」 「…無理です…私のせいで分隊長が…私は、もう…ッ！」 「起きてしまったことは変えられない… 今自分にできることは何かを考えなさい。」 「……」 「私は、できると判断したから頼んでいる。 レーナ…あなたは戦闘は苦手だけれど、馬の扱いが上手で機動力がある。 …だから、あなたにやってほしい。」 「…ッ…、が…頑張りますっ！！」 レーナは声を振り絞って敬礼した。 「…よし。他は周囲を固め、新たな敵襲に備えろ。 敵を仕留めつつ常に前進…本隊の方向を見失うな。 戦闘用意…散開！！」 各々の持ち場へと散る兵士達。 は真っ先に正面の四体を始末し周囲を見回す。 「ルフィン無理をするな、４班は一旦引いて体勢を直せ！」 左から来る群れを仕留め損ねた３・４班への加勢を試みるも、 巨人の攻撃に巻き込まれて落馬する。 「きゃ…あぁッ！」 「班長！」 「くッ…そ！ 私はこのまま立体機動に移る、１班は後に続け！」 この付近の巨人には、仲間を呼ぶ習性でもあるのだろうか。 倒しているはずなのに一向に数が減らない。 どこからともなく続々と出現し、新たな巨人達に囲まれる、絶望 ―― 兵士達が駆け寄ってくる。 「班長、もう無理です！ 撤退しましょう！」 「どうした、怪我人か？ それとも立体機動のガス欠か？」 「いえ、まだ動けます…しかしこの数では…」 「ここで諦めたら、誰が団長を守る！？ 命を無駄にするなとは言ったが、諦めろとは言っていない！」 「しかし…」 「思い出せ、そして忘れるな… これまで巨人に殺された人達を忘れるな！ 私は諦めない！！」 強い風が吹く。 髪をまとめていたゴムは切れ、巨人の体液に塗れた髪が顔にかかる。 はサイドの髪をまとめていた髪飾りを外し、 前髪を横分けにして留め直した。 ―― その姿に、髪飾りの元の持ち主が重なる。 「巨人どもに報いを… …来い！ 最低でも刺し違えてやる！」 アンカーを射出し巨人のうなじに命中させると、 そこから一気に飛びかかった。 「うアアアアア ――――― ッ！！！！！」 最高地点でブレードを振り上げ、一撃でその急所を削ぎ落とす。 その目には、涙が溢れていた。 「奴らは人類の仇だ！ 攻撃を止めるな、一匹残らず駆逐しろ！！」 は、鬼神のごとき強さで残る巨人達をも次々と倒していく。 その様を間近にして兵士達はおおいに沸き上がり、 士気を取り戻していった。 「すげえ…これが…俺達の班長…！」 「皆、班長に続けーッ！！」 「うおおおおーッ！！」 我先にと巨人に向かっていく若い兵士達。 戦場に、の声がこだまする。 「敵を仕留めた者は全速前進、なんとしてでも本隊に追いつけ！ 進め！ 進め ―――― ッ！！！」 ＊ ＊ ＊ 率いる第三分隊が本隊に合流した時、 人間と巨人とが入り乱れる戦場の中ですでに大勢は決しつつあり、 彼女達は負傷者の救助と搬送を余儀なくされた。 エレンの奪還には成功したものの、その代償はあまりにも大きかった。 ウォール・ローゼを発った時に百人程いた兵士のうち憲兵団はほぼ全滅、 全体でも六割近い兵士が戦死した。 生還した者も半数は重傷を負い、エルヴィンもまた戦いの中で右腕を失った。 そして、ウォール・ローゼ内地に巨人が現れたにもかかわらず 壁が破られていなかったこと、討伐した巨人の数が内地にある コニーの故郷・ラガコ村の消えた住民の数と一致したことなどから、 女型の巨人や超大型巨人のみならず、壁の外に多数生息する 巨人達の正体も人間であるという可能性が濃厚になったのだった。 「俺は今まで人を殺して飛び回ってた…ってのか？」 夜更けに一人、苦悩するリヴァイ。 灯りも点けずに執務室の床に座り込み、うなだれる。 すると、廊下を歩く複数の兵士の話し声が近付いてきた。 「…それで、アーベル分隊長の具合は？」 「さっき衛生兵から様子を聞いたが、もう戦闘は無理だって… 南方訓練兵団で、教官になることが決まったらしい。」 「分隊長ならどこに行っても歓迎されるだろうけど… シャーディス教官の下か…苦労するだろうな…」 「なぁ…」 話の内容からすると、第三分隊の兵士達のようである。 「本人はすげえ楽しそうに、 “療養休暇中は家族とユトピア区の温泉で過ごすんだ”とか “次の分隊長は班長で決まりだな”とか言っていたけれど… …無理してるよな。」 「ああ…無念だろうな。」 「……」 「クソッ…！」 リヴァイは小さく呻き、顔を歪めた。 「だけどさ…俺らの分隊がこんなに生き残ったのは初めてじゃないか？」 「班長の指揮のおかげだよな。 あの人は…俺らを生かすことをいちばんに考えて… 指示を出しながらも難しいところでは自分が先頭に出て戦ってくれる。」 「俺は正直、諦めかけていた… だけどあの時の、班長の言葉で踏ん張れた。」 「“これまで巨人に殺された人達を忘れるな、私は諦めない”か… あれは痺れたな。」 「あのっ、私、班長が戦うところを見たのは初めてなんですけど… とんでもなく強いんですね！」 興奮気味に話しているのは、入団して間もない新兵だろうか。 「ああ…戦姫、って感じだな。」 「お前、上手いこと言うな。 小っこくて可愛い顔しててあの戦闘力…まさに戦姫だな！」 「本当にそうですね。班長…憧れちゃいます！」 小さくなっていく兵士達の噂話を聞きながら、 リヴァイはわずかに口元に笑みを浮かべて呟いた。 「悪くねえ…躾けた甲斐があったな。」 ―― あまりにも残酷な世界で見つけた、希望。 の分隊長さながらの苛烈な戦闘指揮は後々まで語り継がれ、 この時から兵士達の間では密かに“戦姫”と称されるようになったのだった。 Back |